
1000日間を振り返ってみたら心のグラフがV字すぎた
ついこないだ、ツイッターで連載していた
『「漫画家やめたい」と追い込まれた心が雑談で救われていく1年間』という、ここ2年ほどの苦しい日々を後悔ではなく、肯定できるまでを振り返った漫画を描き終えました。最後まで読んでくださった皆さん、ありがとうございました。
そんなわけで、そんな苦しかった2年前、自分は何を思って、何を描いてたんだろう。そして今日までにどんな変化が起きてきたんやろう…と思ったので、少し前の生活が激変した約1000日前から振り返ってみることにしました。
1000日前:のほほん子育て漫画期

この頃は子育て日記を中心に描いてた頃で、正直なにを描いても反響が良かったからほんとほぼ思考せずに、起きたことそのまま漫画にしただけみたいな毎日だったかも(言い過ぎ)。
振り返ってみると、描きたいと思って描いてたというより、人気があるし、読んでくれる人たちがいるから描いてたのかも。もちろん自分の思い出として残すってこともありつつも、ぬるま湯に浸かってるというか、待ってくれてる人がいるからというか。安泰であって、怠慢でもあったのかもと思う。
漫画を描くことが楽しいというより、反応をもらえることが嬉しくて描いてたのかも。
ちなみに当時はまだ事務所コルクに所属する前だったり、コロナが流行り出した頃だったり、脱サラしてフリーランスになったばっかりだったりと、生活環境が激変する前で、割とのほほんとしてた時期だったはず。
線が黒だとキツく見えるかな…固く見えるかな…紺色・ゆるい線だと個性になるかもな…なんて考えてたような。溢れるほどある子育て漫画界隈で、どう個性を見せていくのかをデザインとして考えてたのかも。




昔から"人が考えないことをしたい"って想いが強くて、たまにいろんなチャレンジをしてるんですけど、この頃は漫画で謎解きができないかと、こんなの作ってました。実際に読む人が謎を解いて完結する漫画なんですけど、難しかったのかあんまり反応は良くなかったんです。でも自分的にはすごい好きなアイデアやったからまたやりたい。
そういえば多分この時期ぐらいから、自分のキャラは基本的に丸顔でいこう!って振り切ったはず。
850日前:人生初の創作漫画つくり期




人生を変えたと言っても言い過ぎじゃないぐらい、自分にとっては大きな作品になった漫画『今日からこっそり聴いちゃいます』ができた頃。
コロナが流行り出してお仕事が軒並み中止とか延期になった春に、不安とか焦りを感じながらも、どこか冷静で『今しかできないことやるチャンス!』と思って、人生初の創作漫画にチャレンジしてできた作品。
それまでずっとエッセイ漫画しか描いてなかったから、めちゃくちゃ時間かかったし、YouTubeでコルク代表佐渡島さんの動画を見て、漫画の作り方を勉強したり、当時よくお仕事でお世話になってた三川さんにも協力してもらいながら作ったのを忘れない。すっっっっっっっっっっごい苦戦した!
でもモチベーションは超高くて、文章で脚本書いて、印刷して何回も読み直して、ネームにして、印刷して何回も読み返して…って、今では考えられないぐらい丁寧に作ってた。
たしか毎日4ページ10日連続でツイッターにアップしたんですけど、初日からめちゃくちゃ嬉しいが感想届いてウキウキする半面、初日で1万人ぐらいフォロワー増えて2日以降ツイートする時に手が震えるほどガクブルしてた。
ーで、全部公開後に勢いで佐渡島さんに「良かったら読んでください!」ってDMして、その流れでコルクに誘っていただきました。
今だから言えるけど、当時は佐渡島さんのこと全然知らなくて。有名作品の編集をされてたのは知ってたけど、当時はそこに何も思ってなくて。YouTubeで参考にさせてもらってたから…ぐらいの軽い気持ちで送ったんです。だからコルクのこともよくわかんないまま、ぬるっと所属しました。
600日前:絵柄変えていこう・感情を描いてみよう期


こんな感じで、いろんな模写をしたり、絵柄を変えてみたりと今まで手癖で描いてきた2頭身コミカル絵からガラッと変えてみようと考えた時期でした。




漫画はというと、コルクで教わった『感情を描く』をめちゃ意識して描く練習をしてた頃。他にはページの終わりにヒキになる演出を入れる…とか、自分に起きた出来事を大袈裟に面白おかしく描いてみるをやってみたり。
とにかく自分が今まで描いてきたものが、いかに薄かったのかってことを痛感した時期だったかも。
確かこの辺から『漫画家とは』みたいなことを強く意識して、同じ事務所所属の漫画家仲間と自分を比べたり、自分には才能がないんだ…って思ったり、周りの人のアドバイスも自分を否定されてるような気持ちになったりと、今となってはこの辺から心が崩れ始めてたのかも。
今までよりも絵柄の幅が増えて、自分にとっては大きな進歩だったけど、全然楽しくなかった。必死で苦しい毎日だった。ツイッターにあげることも怖くなっていて、他人に自分の作品を見せるということ自体が怖かった覚えがある。
500日前:逃げ期
この頃かな、精神科に行ったのは。予約4ヶ月待ちって言われて診てもらえず、コルクからカウンセラーを紹介してもらってカウンセリングを受けることに。
『心が疲れてるから休んだ方がいいよ』と言われたものの、僕には家族がいて、生活費を稼がないと家族を困らせることになる。休んでられない。と思って休めず。
漫画を描こうと思っても、漠然とした不安とか焦りとか恐怖とか、そういうものに襲われて描けなくて。そこから自分がどうしたいかなんて考えることもできなくて、毎晩『漫画家やめたい』と思いながら転職サイトを眺めてた。
コルクからもらってた大きな案件の下準備がうまくいかず、貯金を切り崩す数ヶ月。それでも頑張らないと…と思い、市の商工会を通して融資を受けることに。借金ですね。今もゆっくり返済中。今こうして振り返りながら、それぐらい自分が追い込まれてたんだなって思った。
この時期が『「漫画家やめたい」と追い込まれた心が雑談で救われていく1年間』の冒頭部分。




コーチングのプロであり、公認心理師の中山さんを紹介してもらって、隔週で雑談会を開いてもらうことになった。漫画の中でも描いたけど、最初はコーチングを知らなくて『スピリチュアルか何かなのか…』と不信に思ってたけど、回を重ねるうちに自分の気持ちに気づけるようになったきた。僕にはカウンセリングじゃなくて、コーチングがあってたんだろうと思う。
その後、コルクとのお仕事は全部辞めさせてもらい、他人と比較しないように自分から距離を作った。Slackのチャンネルは抜けて、集まりも勉強会も参加しない。SNSも見ないようにして、連絡も断つ。とにかく自分だけに集中できるようにと、あらゆることから逃げ出した。それが自分にとっては1番の選択だと思ったから。
中山さんに話を聞いてもらう中で、自分は『漫画家』として高みを目指していきたいのかという疑問が湧いてきた。考えてみると、僕はコルクという漫画家の集まる環境にいるから、自分もいつの間にか漫画家としての頂点を目指さねばという考えになっていると気づいた。
もちろん絵が上手いと描ける幅も広がる、読む人の心を揺さぶれるのかもしれない。けど、それが自分のなりたい姿かと自分に問いてみたら、そうじゃなかった。
今思うと、コルクという環境の中で、活動を支えてくれる人たちの期待に応えないと。恩返ししないと。役に立たないと。売れてお金を入れないと…という気持ちが強かったのかもしれない。当時、何度も『自分のために描こう』って言ってもらってたけど、全然理解できなくて。僕はずっと『誰かのために』としか思えてなかったんだなと思う。だから、誰かのためになれないことが自分を苦しめてた。そう思う。
300日前:漫画家や〜めた


自分の気持ちに気づけるようになって、漫画家という肩書きに自分が苦しんでるってことがわかって、自分は自分としてやりたいこと・できることをしていこうと気持ちが切り替わった頃。ずいぶん前のように思えるけど、まだ1年しか経ってないんだ。
ここまで二人三脚で僕の心について雑談してくれた中山さんと、モヤモヤの晴らし方のヒントになるような漫画を作ろうという話になり『モヤスキ』という漫画を始めた。僕が苦しんできた日常のモヤモヤを、僕みたいな気にしいさんに向けて、気楽に生きられるようなヒントになればと思って。
けど、まだまだ改良の余地があるし、もっといい形があるんじゃないかと思って、20回ぐらいで一旦休止に。実はその後、この企画を一緒に考えたいと言ってくれる出版社がいくつかあり、近いうちにいいお知らせができそうです。
見てわかるように絵はまた2等身コミカルに戻ってます。自分はこの絵柄好きで描いてることがわかったので戻しました。それからは描くことが楽しくなりました。何も考えず、ただ思うように描けて。直したいところは直して、もうちょっとと思ったら練習する。そんな肩の力が抜けた毎日です。
今:今までで1番楽しく描けてる期




振り返ってみると激動の1000日間だったなと思います。1000日前は今日こう思ってるなんて想像もしてなかった。心の動きをグラフにするなら鋭利なV字が描けそうですけど、深い谷の部分もあったからこそ、今日楽しく振り返れてるし、自分の絵柄が前より好きになれて、自信持って描けてるんだなと思えてます。
この1000日間をどうまとめようかと考えたけど、最高でも最低でもなくて、
これでよかったんだな の一言に尽きる。
せっかくなんで、これからのやりたいことも。
自分は人の役に立ちたいって気持ちがめちゃくちゃ強いんだなってことに気づいた。役に立てないと見放されると思い込んでたのかも。それよりもっと自分が楽しいと思うものを、素直に出していくことにしよ。SNSも漫画ももっと自分のために作ってこ。よっし!
— 吉本ユータヌキ (@horahareta13) November 3, 2022
自分が楽しいと思うもの、やりたいと思うことを全力でやって、それを素直に出してく。そんな毎日を過ごしたいと思ってます。
ちなみにやりたいことは、僕みたいな
"気にしいな人が今までよりも楽に生きられる毎日をつくる"です。
それが漫画なのかYouTubeなのかnoteなのかわかんないですけど。そんな僕自身を見てもらって、面白がってくれる人たちに応援してもらいたいと思ってます。
また1000日後はどうなってるんやろ。また想像もつかないことになってるんやろなと怖さもあるけど、すっごい楽しみです。